2025年10月に経営管理ビザの要件が大幅に厳格化されてから、制度の実務運用も徐々に明確になってきました。
これから日本で事業を始めたい外国人にとって、今回の改正はビザ取得のハードルや準備内容に大きく影響します。
中でも、事務所要件の重要性はこれまで以上に高まり、適切なオフィスを確保できるかどうかがビザ取得の成否を左右する状況となっています。
本記事では、経営管理ビザの基本から、2025年改正で強化されたポイント、そしてビルオーナー様が把握しておくべき最新の事務所要件について、分かりやすく整理して解説します。
外国人の経営管理ビザとは

経営管理ビザとは、外国人が日本で中長期的に活動する際に必要な「在留資格(ビザ)」の1つです。
外国人が日本で事業を行う場合の在留資格
経営管理ビザは、外国人が日本で「貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」をする際に必要な就労ビザです。正式には、在留資格「経営・管理」といいます。
企業などの経営者や管理者(部長や工場長などの上級管理職)が対象となり、以下のようなケースで取得が必要です。
・日本で新しく会社や支店を設立し経営者・代表者となる
・ 既存企業の経営者や管理者となる
たとえば、外国人が起業家として日本で会社を設立し事業を立ち上げる際には経営管理ビザが必須となります。また、投資や事業継承などで既存企業の役員に就任する場合も必要になります。
就労ビザの一種である「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」「技能」「企業内転勤」などは企業に雇われて働く場合に必要となるのに対し、「経営・管理」は雇う側として働く場合に必要という違いがあります。
2014年より投資・経営ビザを見直して創設
経営管理ビザは、2014年の入管法改正により、以前の「投資・経営ビザ」が見直されて創設された在留資格です。
投資・経営ビザは、「投資」とあるように、申請者自身の500万円以上の対日投資(会社設立の出資など)が前提となり、外資系企業の経営活動が対象となっていました。
一方、経営管理ビザでは、申請者の投資が必須ではなくなり、外資・日系の区別もありません。
投資・経営ビザに比べ、国内の事業経営・管理に従事する外国人を広く受け入れる枠組みになっているのが特徴です。
たとえば、日系企業で外国人が役員に就任する、別の人が出資した企業で取締役になるといった場合でも取得が可能です。
2025年10月より経営管理ビザが厳格化
経営管理ビザは、法改正により2025年10月より許可基準が厳格化されています。主な要件と改正内容は以下のとおりです。

参考:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」
具体的な改正内容を以下で見ていきましょう。
資本金・出資総額の要件が3,000万円以上に変更
資本金・出資総額が以前の500万円から3,000万円に引き上げられています。
なお、資本金・出資総額とは、株式会社の資本金の額または、合名会社・合同会社の出資総額です。
個人事業主の場合は、事業所の確保や雇用する職員の1年間分の給与、設備投資などの事業を営むために必要な投資総額が該当します。
経歴・学歴要件が追加
以前は申請者に対する経歴・学歴は求められていませんでしたが、今回の改正により以下のいずれかの学歴・経歴が必要です。
・事業の経営または管理について3年以上の経験
・経営管理または申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野に関する博士、修士若しくは専門職の学位
なお、3年以上の経験には事業所の確保などの企業準備活動期間が含まれ、学位については海外で取得した学位も対象となります。
常勤職員を1人以上雇用する必要がある
以前の「資本金500万円もしくは2名の雇用」という要件が、改正により1人以上の常勤職員の雇用が必要となりました。
常勤職員になれるのは、以下のいずれかに該当する人となります。
・日本人
・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格をもって在留する外国人
日本語能力の要件が追加
以前は申請者の日本語能力は求められていませんでしたが、改正により申請者または常勤職員のいずれかに相当の日本語能力が求められます。
具体的には、以下のいずれかの合格証や成績証明書、資料などの提出が必要になります。
・公益財団法人日本国際教育支援協会及び国際交流基金が実施する日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定
・公益財団法人日本漢字能力検定協会が実施するBJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得
・中長期在留者として20年以上日本に在留
・日本の大学等高等教育機関、または義務教育を修了し高等学校を卒業している
なお、常勤職員が日本人または特別永住者の場合は上記の要件を満たす必要はありません。
専門家による事業計画書の確認義務が追加
今回の改正により、提出する事業計画書は具体性・合理性が認められ実現可能なものであるか、経営に関する専門家による評価が義務付けられました。
評価する専門家としては、中小企業診断士・公認会計士・税理士が該当します。
経営管理ビザ取得を考える外国人が入居する場合には
経営管理ビザを取得するには上記の要件以外にも「日本での事業所の確保」が必須となります。
そのため、ビルオーナー様は経営管理ビザ取得を検討している外国人が入居する際に備え、物件要件や契約要件などを押さえておくことが大切です。
バーチャルオフィスやシェアオフィスは対象外
経営管理ビザ取得で必要となる「事業所」は以下のように規定されています。
・経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われている
・財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われている
事業所は独立した専有スペースが必要になるため、物理的な空間が存在しないバーチャルオフィスや仕切りのないシェアオフィスは対象外です。
また、継続的な事業の運営が求められるため、短期賃貸スペースや容易に処分できる屋台なども認められません。
自宅兼用は原則不可
事業所は独立したスペースであり、企業としての実態を伴っていることが必要です。自宅兼事務所は独立性や事業実態の証明、事業規模に応じたスペースの確保が難しいことから、原則認められません。
ただし、出入り口を明確に分ける、外から見て企業の存在が確認できるなどし、客観的にみて私生活から独立していることが証明できれば認められる可能性があります。
とはいえ、事務所スペースの確保や常勤職員の勤務、事業用設備の設置などの点からも自宅兼事務所で要件を満たすのは容易ではありません。
基本的には、独立した事務所を確保する必要があります。
申請する法人名義で賃貸契約する
賃貸契約で事務所を確保する場合、「使用目的が事業用であることを明確にする」「法人名義で契約する」ことが必要です。
契約書の使用目的が「居住用」となっていると認められない可能性があります。
事業の継続性も求められるため、契約期間も短期ではなく長期が望ましいです。
また、事務所は事業の実態を伴っている必要があります。具体的には、内部はパソコンやデスク、
電話といった事業活動が行える状態、外観は看板や表札、郵便受けなどを設置し企業の存在が分かるようにした方がよいでしょう。
まとめ|経営管理ビザについて理解しておこう

経営管理ビザとは、外国人が日本でビジネスを行う際に必要な在留資格です。2025年10月の法改正により取得要件が厳しくなっており、事務所要件を満たすことも必要不可欠になっています。
経営管理ビザでは、独立した事務所スペースを持ち、法人名義で賃貸契約することが求められているため、オフィスビルなどを活用するのが一般的です。
今後、外国人が経営する会社の、入居申し込みがあった場合には、経営管理ビザの取得要件も理解しておくとよいでしょう。