新たな賃借人(テナント)様との賃貸借契約時に
「民法の改正内容を反映していない」、「改正内容を知らない」
「契約書をどのように改定したらいいか分からない」等々の事象が、多く発生しています。
今回は民法改正の中から影響が出ている、
民法第607条の2「賃借人による修繕」について解説していきます。
賃借人(テナント)様とのトラブルを回避するためにも、是非参考にしてみてください。
【条文】民法第607条の2 「賃借人による修繕」
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
新設の規定になります。
民法第608条の「賃借人による償還請求」を明文化。
条文の解説
本条は新設の規定になります。
2020年4月の民法改正前も、第608条で賃借人による償還請求は認められていたことから、ある程度、賃借人の修繕はできるものと考えられていました。しかし、具体的な内容についての規定はありませんでした。
又、賃借物は他人の所有物であるにも係わらず、修繕は物理的変更を加えることが多い為、基本的には、通常所有者である賃貸人が修繕を行うこととし、
賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知(615条)したにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき(本条一号)や、急迫の事情があるとき(本条二号)に、賃借人も修繕を行うことができるものと明文化しています。
これは、賃貸借の目的を達成させるために、賃借人の立場をより強化したものといえます。
今後は、賃貸物の修繕の場面でトラブルが増えることが予想されますので、
賃貸物の破損など発生時の「賃借人の通知義務」、「通知方法」、「破損等箇所の確認方法」、「修繕の手順等」をあらかじめ定めておくことが有益でしょう。
賃貸借契約の条文例
(甲:賃貸人、乙:賃借人)
(修繕の費用負担及び実施方法)
第●条 乙は、本建物(貸室を含む。本条において同じ。)及び甲所有の造作設備につき修繕を要する箇所が生じたときは、速やかにその旨を甲に通知し、甲は遅滞なくこれに適切に対応する。ただし、乙の故意又は過失により生じた損傷等の修繕に要する費用は、乙の負担とし、乙の費用負担による修繕に伴って交換または設置された物は甲の所有物とする。
2.甲が本建物及び甲所有の造作設備の修繕のために必要な措置を行う場合、甲は事前にその旨を乙に通知する。ただし、緊急を要する場合は、乙に通知することなく、必要な措置を行うことができる。
3.前項の場合、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該措置の実施を拒否することができない。
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